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症例 CASES

呼吸器外傷

猫の外傷性横隔膜ヘルニア(手術の画像があります)

外傷性横隔膜ヘルニアは交通事故がおもな原因となりますが落下やけんかなどそれ以外の原因も報告されています。特に交通事故によるケースが多いようです。外傷性横隔膜ヘルニアの多くの症例では直接的に横隔膜へ外傷が作用するわけではなく、衝撃が身体に加わることで腹部が強く圧迫され腹圧が上がり、間接的に横隔膜が損傷を受けてしまいます。その結果、破れた穴(ヘルニア孔)から胃や腸、肝臓など腹部の臓器が胸の中に逸脱することで発症します。

横隔膜ヘルニアによる症状は呼吸や循環状態に関するものと、逸脱した臓器そのものによる影響のものと2つが考えられます。ヘルニア孔から逸脱した臓器は腫れたり、締め付けられたりすることで症状が現れることがありますが、これらは比較的早期にみられます。

胃や小腸が逸脱し、締め付けられるような状態になってしまうと消化管内容物の通過障害が起きたり、胃拡張が生じる場合もあります。また腸管への血流が阻害されると腸が壊死してしまったり、穴が開いてしまうこともあります。

肝臓が逸脱すると肝臓のうっ血や壊死、胆管閉塞、黄疸などが生じます。また肝臓がうっ血すると肝臓内に細菌が増殖することがあり、その状態で整復すると血液循環が改善されたことによって細菌の毒素が全身に回り、ショックを起こすリスクが報告されています。

横隔膜ヘルニアでは呼吸困難が最も一般的にみられます。呼吸困難は横隔膜の損傷によって呼吸機能が制限されること、逸脱した臓器により胸腔の容積が小さくなり肺が圧迫されることが主な原因です。また外傷による痛みが呼吸に影響を与えている可能性もあるため疼痛管理も重要になります。

外傷性横隔膜ヘルニアの治療法は外科手術が第一選択となります。手術内容は胸部に入り込んだ臓器を元の位置に戻し、裂けた横隔膜を修復する処置となります。完全に横隔膜を整復し、合併症なく手術が終われば完治が見込めます。ただし、外傷性横隔膜ヘルニアの手術は簡単なものではなく、麻酔リスクや合併症のリスクが高いものになります。

自宅から逃げ出してしまい、その後呼吸困難の状態で保護された猫ちゃんのレントゲン画像です。横隔膜を損傷し、腹部の臓器が胸腔に飛び出しています(赤丸)。

損傷した横隔膜を修復している様子です。この症例では横隔膜の損傷が激しかったため、支持糸を掛けながら縫合していきました。青丸で囲んでいる所が損傷し裂けてしまった横隔膜になります。

術後のレントゲン画像です。逸脱した腹部の臓器が元の位置に戻り、呼吸も安定して無事退院となりました。