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猫の卵巣遺残症候群(手術の写真があります)

猫の卵巣遺残症候群は、避妊手術を受けたにも関わらず卵巣組織が体内に残っていることで発情徴候を示す状態です。通常、避妊手術では卵巣摘出術または卵巣子宮摘出術が行われますが、どちらの術式でも卵巣を摘出するため発情行動は起こらなくなります。しかし、手術後に卵巣を取り残しているとその個体は発情徴候を示し、卵巣遺残症候群をひきおこします。

卵巣遺残症候群の診断は発情行動を確認することでおこないます。発情徴候として、人にすり寄ってくる、鳴き声を上げる、甘えん坊になる、足踏み行動(ロードーシス)、ローリング、粗相をする、外猫に異常に反応するなどがあり最初にこれらを確認することで診断します。また確実な診断として、発情兆候が見られるときにhCGやGnRHなどの排卵を起こす注射をして排卵させ、その約1週間後のプロジェステロン値の測定を行います。プロジェステロンは黄体からしか放出されない性ホルモンなので、この値が1ng/ml以上あると卵巣遺残が確定します。

治療方法としては、再手術により残っている卵巣を摘出することが最も適切な方法です。このときの手術時期は卵巣の確認がしやすいことから黄体期(排卵後40日間)に行われることが推奨されます。ただし、手術を希望しない場合やできない場合には、発情抑制薬によって経過を見ることもあります。

2年前に他院で避妊手術をおこなったがその後も発情を繰り返している、という主訴で来院されました。症状とプロジェステロン濃度が高値を示したため卵巣遺残症候群を疑い、手術をおこないました。

左の写真の鉗子で指している組織が残存していた卵巣になります。少しでも取り残してしまうと卵巣は再生し再び発情を引き起こします。

左写真の中心にある組織は子宮の断端部分になります。通常避妊手術をおこなうと子宮は萎縮してしまいますが、今回の症例では卵巣からのホルモンの影響を受け子宮断端が太くなっています。

残存している卵巣を取り除き、再度プロジェステロン濃度を測定したところ低値になっていました。その後、発情徴候はみられていません。