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症例

症例 CASES

寄生虫

マダニ症

マダニがつくと、さまざまな症状や感染症のリスクがあります。マダニは春から夏にかけて成ダニ、秋から冬にかけて卵から孵化した幼ダニ、若ダニの活動が盛んになり1年を通して活動しています。マダニは草むらなどに多く生息し宿主となる動物を待ち構えています。マダニに咬まれると持続的な吸血(雌の場合6~10日間)を行い、病原体を保有していた場合では重篤な感染症を発症する可能性があります。

マダニの吸血により宿主に与える影響としては以下のようなものがあります。

  • 貧血:マダニが大量に吸血すると、犬は貧血を起こします。粘膜の色が薄くなったり、元気がなくなったりする場合は注意が必要です。
  • アレルギー性皮膚炎:マダニの唾液に含まれる物質がアレルゲンとなり、犬の皮膚に炎症やかゆみを引き起こします。咬まれた部分が赤く腫れたり、しこりになったりすることもあります。
  • ダニ麻痺症:日本ではあまり発生しませんが、一部のマダニは神経毒を注入することで、犬にふらつきや歩行困難、呼吸困難などの神経症状を引き起こします。この場合は早急な治療が必要です。

マダニが媒介する病気としては以下のようなものがあります。

  • 重症熱性血小板減少症症候群(SFTS):急激な発熱や活動性の低下、食欲の低下などがみられます。血液検査では白血球減少、血小板減少が特徴的にみられCRPの上昇を伴います。
  • バベシア症:バベシア原虫という寄生虫がマダニを介して犬の赤血球に侵入し、重度の貧血や黄疸、ビリルビン尿などを引き起こします。感染した場合は抗原虫薬や抗生物質などの治療が必要です。
  • ライム病:ボレリア菌という細菌がマダニを介して犬に感染し、発熱や関節炎、心筋炎、神経障害などを引き起こします。人にも感染する人畜共通感染症です。感染した場合は抗生物質の治療が必要です。

特に最近では人へのSFTS感染が大きな問題になっています。マダニが媒介する病気の予防としては1年を通じてのマダニ駆虫薬の投薬が有効です。

このマダニは瞼に付着していました。マダニは眼の周囲、鼻梁、耳の内側、下腹部、指の間、肛門周囲など毛の薄い所に寄生します。見つけた場合は無理に取ろうとせず動物病院へ受診してください。